Kokonoe Green Library
~食で身体を整えて、Libraryで知らない世界へ旅をする~

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Bon voyage!

花豆の煮えるまで 小夜の物語

更新:2019/03/01

伝統食、高原花豆の甘煮の原風景


お客様からのプレゼントで本書と出会いました。

そのお客様は、自称「大の本好き」であり、ご自身も著書を出版されている方です。

私たちが戸隠で花豆を栽培していることを知り、この本をくださったのでした。

お客様の温かな心遣いが本の内容と重なり、私たちにとってご縁をいただいた一冊です。

本の作者である安房直子さんは、児童文学で数々の賞を受賞された著名な作家さんです。
この本も幾つかの賞を受賞した作品です。

話の内容は、山の温泉宿の家にいる12歳の小夜という主人公が、自然豊かな山や森で動物や山の精、鬼の子に会い、不思議な体験をしながら成長していくというのが大まかなあらすじです。

また、小夜にはお母さんがいませんが、小夜を大事に想ってくれているおばさんがいます。

母への郷愁とおばさんの優しさ。その間で揺れ動く少女の心の純真さに、大人が読んでもほろっとくるものがあります。

本のタイトルの所以は、小夜とおばあさんの会話にあります。
山の温泉宿の名物である花豆の甘煮をおばあさんが作っているときのやり取りです。

「父さんが、母さんと出会ったときのいきさつなら、話してやってもいいが、長い話になるぞ。」
小夜はうなずいて、
「豆が煮えるまで、ゆっくり聞くよ。」

奇遇なことに、戸隠でもお茶受けに必ず並ぶ一品は花豆の甘煮です。

小夜が言う通り、花豆を煮るには、数日の時間がかかります。

戸隠に移住したばかりの頃、地元のお年寄りの方に花豆の煮方をお聞きしたことがあります。

「囲炉裏があった頃は、大きな鍋でコトコト煮ていたよ。」と言っていたことを思い出し、小夜とおばあさんの会話のシーンと重なりました。

私たちのカフェでも花豆を使ったお料理を出させていただいています。

時を超えて食べつないでいる伝統食の原風景を思い浮かべ、この本をプレゼントしてくださった優しい気持ちを感じながら、私はいつも花豆を煮ています。

(キッチン担当)

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