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料理を引き立たせるバイオフィルム

UP DATE:2020/08/10 カテゴリ:料理 Cuisine

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2年もののコンブチャ(紅茶キノコ)
撮影日:2020年8月10日

微生物の単体を肉眼で捉えることは容易ではありません。土壌中のセンチュウ等、虫眼鏡でギリギリ見えるものもいますが、細菌の多くは1 μm(1mmの1/1000)であり、ウイルスに至っては10〜100nm(1μmの1/10〜1/100)程度とされています。そのため、食品や人の健康を左右する微生物の大多数も肉眼で確認することは不可能です。

しかし、微生物単体では視覚確認が不可能だとしても、集合体になれば見ることができます。それがバイオフィルムです。見た目にインパクトがあるため、当店の食堂・ライブラリーに置かれたコンブチャのバイオフィルムで盛り上がることが多いです。

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バイオフィルムとは?

固体表面や界面に付着した微生物が形成する三次元構造体のことで、特に水分が多い場所で良く見ることができます。水中の固体表面に付着したぬるぬるした物体を見たり、触った経験がある人は少なくないと思いますが、あれがバイオフィルムです。

具体的には花瓶にお花を活けて1週間ほどすると形成される茎の表面や花瓶の内壁の透明のフィルム状のもの、あるいは工場排水が放出される土管の内壁や出口周り、人体では口腔内のデンタルプラーク(歯垢)として形成される場合もあります。このように地球上の水が豊富な場所では微生物が繁殖しやすいため、様々な種類のバイオフィルムが存在します。

環境中の代表的な細菌の一つにSerratia(セラチア属)がいます。赤い色素を産生する種類の細菌もおり、微生物学が発展していなかった古代に「キリストの血で赤く着色されたパン」と表現されていた故事に因んで「霊菌」と呼ばれることもあるそうです。

これもバイオフィルムの一種と言えるのではないでしょうか。Serratia由来のバイオフィルムは、健全な免疫機能を持つ人ならそれほど大きな害は出ないそうですが、免疫機能が低下していると疾患を引き起こすケースもあるようです。

なぜ微生物はバイオフィルムを形成するのか?

バイオフィルムは一種類の菌ではなく、数種の菌が共生しているケースが多いようです。相互に様々なシグナル伝達を行い、栄養共有関係、抗菌耐性獲得など、環境ストレスに抵抗しながら生態系ニッチを確保するために編み出した方法の一種とも考えられています。

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料理を引き立たせるバイオフィルム

上記で見てきたように、人体の直接摂取は控えた方が良いもの、あるいは害になるものも多いため、自然環境で見かけても安易に口にしない方が良いでしょう。しかし、人類の経験則と遺伝子解析などにより、人体に有効に作用する優れたバイオフィルムの存在も明らかになってきています。

その一つが、冒頭の写真でも紹介したコンブチャです。年輪のような、土星の環のような見た目をしています。日本では昭和40〜50年代に「紅茶キノコ」という名称で人気となり、最近はアメリカ等でも大人気で、スーパーマケットやオーガニックストアに入ると多種多様なコンブチャが売られており、健康ブームを後押ししている様子が伺えます。

THE KOKONOEではこのコンブチャを有用なバイオフィルムであり発酵調味料と捉え、お料理やドレッシングなどに活用し、健康増進効果だけでなく複雑な味わいに一躍担っています。

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参考文献・WEBサイト

応用微生物学 第3版

ビジュアル・バイオテクノロジー

国立感染症研究所 感染症情報センター

厚生労働省 e-ヘルスネット

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この記事を書いた人

THE KOKONOE 代表⽔⾕ 翔

医⼯学修⼠。信州⼤学⼤学院博⼠課程(社会⼈研究⽣)に在籍し、⼟壌微⽣物のゲノム解析を通じて⽣物多様性と共⽣のメカニズムを研究。
民泊とファーマーズレストランでは過ごす⼈の⼼と⾝体の両⾯からパワーチャージできる空間づくりに⼒を⼊れている。花⾖・エディブルフラワー・⼭野草・ハーブ年間約120種を有機栽培。
⾳叉美容トリートメントSound Luxuryを実施。土づくりアドバイザー。

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